◆「慣れ」と記憶の関係
感情を自ら積極的に感じることにより「慣れる」という現象を発生させることは、症状を治療するために、とても重要なことになります。
では、そもそも「慣れる」という現象とは、科学的にはどういったことなのでしょうか?
そのことは、次の研究結果を見ると、詳しく理解することができます。
東京大学大学院薬学系研究科准教授で、薬学博士である池谷裕二さんの「脳はなにかと言い訳する」という本では、「慣れる」という現象は記憶の作用であるということを示す研究結果が紹介されています。
『意外に思われるかもしれないが、ストレスに慣れることは一種の「記憶の作用」である。環境そのものは変わっていないにも関わらずストレスが減る。これは「現在の環境をストレスに感じる必要はない」と脳が"記憶"した結果なのだ。
心理学者ヘンケは、ストレスと海馬(注:情報を記憶するために必要な脳の機関、海馬が無くなると記憶ができなくなる)の関係について一連の研究を行なっている。海馬を麻痺させると記憶ができなくなる。実際に試験をしたところ、海馬を麻痺させたラットは新しい環境にうまく順応することができず、いつまでも強いストレスを感じ続けた。この結果から、ストレスに慣れることは海馬を使った脳の作用によるもの、つまり「記憶」だということがわかる。逆に海馬を刺激するとストレスが減少した。つまり記憶力を高めることでストレスが解消されたわけだ。記憶力にとってストレスは天敵だが、ストレスもまた記憶力を天敵としているのだ。』
この文章を読むと、「慣れる」という現象は、記憶の作用により精神状態を安定させている現象であることが分かります。
また、「慣れる」という現象を発生させるためには、次の2つの事柄が起こる必要があることも分かります。
・「現在の環境をストレスに感じる必要はない」と脳が記憶する
・記憶力が高まる
この2つの事柄が起こると「慣れる」という現象が発生します。そのため、ストレスに慣れるためには、この2つの事柄を引き起こすことが大切になります。
「安心できる状況でネガティブな感情を感じる」という行為は、効率的に「慣れる」という現象を発生させる行為です。したがって、この行為をしているときは、上記の2つの事柄が効率よく引き起こされていると考えられます。
であるならば、安心できる状況でネガティブな感情を感じているとき、どのような原理で、上記の2つの事柄は効率よく引き起こされているのでしょうか?
そのことを理解するためには、まずは、体から分泌されるストレスホルモンの働きを知る必要があります。
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